陪審員の無効裁定というのは、事実認定だけではなく、裁判官の説示を無視した評決を下す事をさします。一般的には、陪審員による法の無視(Jury Nullification)と呼ばれています。「評決のとき」という映画で描かれていた様に、検察側が通常の人から見て疑問を持たない程度の証明をしているのに、陪審員が被告人に同情して無罪評決を下す事があります。実際は説示を無視する陪審員候補者は除外されるので、陪審員による法の無視をする事はめったにないと思います。
旧陪審法が大東亜戦争中に停止されたままでなくても、陪審員による法の無視が起きる事はないだろうと思います。ただ、右翼テロや社会主義者を取り締まるために出来た治安維持法や皇室に対する罪が陪審法の適用外にされなければ、検察側の証明が完璧であっても、犯した犯罪に対して刑罰があまりにも重いと感じた場合なら、無罪評決が出て、裁判長が陪審のやりなおしを命じて、また無罪評決が出て、無罪確定というケースが出たでしょう。
1932年に、李奉昌氏が天皇陛下の暗殺未遂事件を起こしました。李奉昌氏は貧しい環境の上に、当時の昭和恐慌で、ものすごい不景気だったので、当時の日本政府に対して反感を持っていました。そこに、朝鮮独立運動をしていた金九氏から、天皇陛下を暗殺するべきだと勧められて、天皇陛下の暗殺事件を決行して、未遂に終わりました。
皇室に対する罪は死刑しかないので、裁判官も死刑にするしかなかったのですが、李奉昌氏の境遇を考えると、死刑という刑罰はあまりにも重い上に、李奉昌氏が泣いて、自分の犯した罪の重さを反省しているので、恩赦で死刑を回避しようとしましたが、金九氏にそそのかされて犯罪を犯したので、恩赦を出すと、犯罪抑止にならないとして、死刑判決が確定して、李奉昌氏の死刑が執行されました。これについて、当時の法律新聞では、複雑な気持ちである、とコメントが出ていました。
今年のNHKの大河ドラマである「平清盛」で、皇室の事を王家と悪意のある表現をしていたために、国民の怒りをかってしまい、「平清盛」の視聴率が10%を割りそうなところまで落ちてしまいました。この王家事件のために、大河ドラマのファンの方がNHKの受信料を払わないというケースが増えているそうです。NHKが皇室に対して悪意のあるドラマを作ったために、NHKの経営が傾く事を考えると、李奉昌氏の事件は当時の日本に相当な衝撃を与えた事でしょう。
それでも、被告人が望めば、旧陪審の適用を受けるシステムであれば、陪審員が「陪審員の無効裁定」で、検察の証明は完全でないとして、無罪評決を出すと思います。旧陪審では、判例上、二度連続で無罪評決が出ないと、裁判長を拘束出来ないのですが、多分、最初の無罪評決を認めるでしょう。李奉昌氏が無罪になっても、犯罪を犯す事がなく、幸せな家庭を持てたのではないかと思うと、陪審制度に欠陥が入れられてしまった事は残念でした。
それでも、陪審制度は、実質的に政府や官僚による立法に対して、拒否権を行使する権限を持っています。独裁政治や国民を弾圧する政治から、社会的弱者を守る最大かつ最強の砦の役割をはたしています。憲法は、国家権力の暴走を抑える規定ですが、明治憲法の頃は現人神である天皇陛下の威光で、政治家や官僚が守っていましたが、NHKの「平清盛」の王家事件を考えると、皇室の影響力が落ちている様な気がします。だからこそ、今の裁判員法をできるかぎり陪審制度のメリットを入れられる様に、今の日本人が頑張らないといけません。
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