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 河合英治郎事件や横浜事件の様な言論弾圧事件について、暴走した検察官や警察官を批判をする事は簡単ですが、こうなったのは、権力を監視する役目を持っているマスコミは検察や警察や軍部である行政権力におもねってしまい、行政権力のいいなりになり、最後は横浜事件で、マスコミ関係者を中心に言論弾圧を受けて、取調べ中の拷問で5人の命を落とす最悪の事態になりました。

 旧陪審法は民意を反映させ、拷問による虚偽自白を避けるために成立させたのに、法務官僚が陪審法に欠陥をいれたのを見て見ぬふりをしていたので、国民を守るはずの国家権力によって、言論弾圧を受けましたが、マスコミはまったく反省していない様な気がします。たとえば、講談社の「歴史クロニクル」という分厚い本を読んでも、旧陪審法の事に全く触れていません。まるで、陪審法がないから、言論弾圧事件を受けた様な印象を受けます。

 1927年に発行された「陪審法の新研究」(梶田年著、清水書店)でも、法学士である著者が、陪審制度の適用範囲があまりにも狭いと批判しています。皇室に対する犯罪や内乱罪の様な同胞である国民の審判が必要な事件を受けられないのはおかしい、イギリスの陪審法では、刑事事件は基本的に陪審裁判を受けられるので、陪審裁判の範囲を拡大するべきである。それに殺人罪や放火で起訴されて、なお陪審裁判を受けるのは、無実の被告か証拠不十分の被告で、無罪判決を狙う不届き者しかいないだろうと主張されました。

 こういった本が2円50銭(今の貨幣価値で2500円くらい)で販売していたのに、マスコミは治安維持法が陪審法の適用外にされていたのを国民に訴えようとしませんでした。その後、1932年に作家の小林多喜二氏が治安維持法違反で逮捕され、取り調べ中の拷問で命を落としたのに、陪審制度の重要性に気がつかないふりをしていました。陪審法を成立させた高橋是清首相や原嘉道法相がいたので、この時なら陪審法の改正も出来たのに、マスコミは社会主義者ではないから、関係ないといった態度をとってしまったのが、残念です。

 そして、1939年の河合英治郎事件や1942年の横浜事件で、表現の自由が完全に侵害されました。今のマスコミも国家権力のいいなりになっているので、そろそろ態度を変えないと、とんでもないしっぺ返しを受ける様な気がします。自分もネット言論やブログで訴えていますが、漫画家時代の様な発言力が全くないので、マスコミ関係者で発言力のある方はフリーになって、権力の監視をして欲しいです。

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なぜこの国ではおかしな議論がまかり通るのか メディアのウソに騙されるな、これが日本の真の実力だ

 経済成長をするためには消費税増税が必要だ、という経済評論家が多いですが、その説について数学のエキスパートであり、元財務官僚の著者が完全に論駁しています。明快な論理で、テレビに出演する偉い学者たちを論破する文章を読むと、気分がすっきりするので、ぜひ読んでみてくださいね。