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 ゴールデン・ウィークに実家に戻っていた時に、テレビで言論の自由はアメリカ占領軍が与えた様な印象を与えるドキュメンタリーがあったのですが、言論の自由は、海野普吉弁護士や三宅正太郎判事をはじめとする多くの人の努力で勝ち取ったものであり、アメリカ占領軍が与えたものではありません。自分はテレビを持っていないので、普段、マスコミがテレビでどういった発言をするのかは、ネットを通さないと、わかりませんが、アメリカの言論の自由も、国民の努力によって勝ち取ったものです。

 1735年のアメリカで、植民地総督についての中傷記事を新聞に掲載した新聞記者であるジョン・ピーター・ゼンガー氏が、政府認可の新聞以外の発行を禁じる植民地法律に基づき、煽動的文書毀損罪に問われた時、陪審裁判で、ウィリアム・ペン氏が宗教弾圧を受けた事件で、陪審員が法律を無視して、無罪評決を出した例を引いて、陪審員による無効裁定で、この法律を無効と判定して、これによって、出版の自由が確立されました。

 その後も、本国議会の制定した本国商人のための利益のために、植民地人の貿易を規制する法律の違反者を、植民地だったアメリカの陪審裁判で、次々と無罪評決を出しました。それに対して、イギリス政府は、密貿易者を陪審にかけられない海事裁判で裁判をする事で、植民地における陪審裁判を停止しました。

 これが、印紙税問題に並ぶ独立革命の直接的な原因とされています。このために、独立宣言前後に制定された諸州憲法で、陪審裁判を受ける人民の権利を謳い、合衆国憲法で、第3条、修正6条、第7条の3箇条にわたって、陪審裁判について定められています。

 イギリスのデブリン判事は、「権力者は陪審制度を嫌う。」とおっしゃっていましたが、陪審制度があると、裁判権を国民が握る事があるので、圧政的な法律が作られたとしても、陪審裁判で法律を無効化する事が出来ます。日本帝国の政党政治が右翼テロや社会主義者を取り締まる治安維持法を成立した事について、日本の知識人から批判されていますが、そもそも法務官僚が治安維持法を大正陪審法の適用外とした事が問題なのであり、今の裁判員法にも言える事ですが、適用範囲を広げていれば、圧制的な法律も無効化したはずです。

 外国も評論家の人も、治安維持法はナチス・ドイツやソビエトと比較すると、まったく大した事がなかった、と主張している本をカナダで読みました。治安維持法を語るのは別に構いませんが、陪審法の事について全く触れずに、政党政治非難をするのはあまり感心出来ません。本の売上がコミック以外、すごく下がっていますが、日本の知識人が歴史学者でもない自分から突っ込まれる様な歴史の評論の本を書かれるから、読者に見放されている様な気がします。

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弁護士布施辰治弁護士布施辰治
著者:大石 進
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 死刑廃止を訴えていた弁護士でもあり、日韓併合中に多くの朝鮮人から尊敬されていた方の評伝です。日本窒素を創業した野口遵などのように朝鮮人に尊敬されていた日本人を取り上げている本が少なくなったので、ぜひ朝鮮人に尊敬されていた方の足跡が書かれている本を読んでみてくださいね。